road2vのブログ - a little white rooster

Windows10 64bit化、書庫:PC(パソコン)関連作りました。

「ゆれる」西川美和/ポプラ社

西川美和さん自ら監督した映画も公開されたことで、
話題になった著者初のオリジナル長編。

各章ごとに、"かたり"手が変りながらひとつの事件の輪郭を浮かび上がらせていく。
作中、登場人物の言葉にも現れているとおり、「藪の中」を意識して書かれたようだ。

田舎で家業のガソリンスタンドをついでいる実直・やさしい兄。早川稔
家を飛び出してカメラマンとして成功している弟。早川猛
二人の父、早川勇
二人の幼馴染でもあるガソリンスタンド従業員、川端知恵子
後半、ふたりの兄弟をつなぐことになるガソリンスタンド従業員、岡島洋平
稔の弁護士を引き受ける叔父(勇の兄)、早川修

兄弟の子供の頃からの微妙な心理に、どうしても切ないものを感じる。
...

最後、走って追いかけながら呼びかける弟から、
逃げだすように駆け出した兄の前に、バスがさえぎるように
停車して物語は終わるのだけれど、
個人的には、二人の中でなにかがふっきれて新しいスタートが始まるのだと信じたい。

岡島洋平の存在が、その妻や娘の存在もふくめて
暖かく物語を救ってくれている。

大切なものは、たぶんこういうものなのだと思う。