road2vのブログ - a little white rooster

Windows10 64bit化、書庫:PC(パソコン)関連作りました。

「日本沈没 第二部」小松左京+谷甲州/小学館

日本沈没」から33年ぶりの続編。

こんな風に、また”あの"小説と再会できるのが、
読書家にとっての無常の喜びだとつくづく思う。

映画「日本沈没」が33年ぶりにリメイクされたことも、
契機になっているのだろうと思う。

この小説の成立過程については、小松左京さん自身があとがきに詳細を
語ってくれていて、何年ぶりかにふれた小松左京さんの言葉が嬉しい。


前作「日本沈没」を読んだのは、およそ20年ほど前のことになる。
小松左京さんの著名な代表作であるはずなのに、中学生の頃から
長い間書店で見つけられず、「首都消失」や「さよならジュピター」で
小松左京フェアが書店で展開されていた時期に文庫判が再刊されて
ようやく手にすることができた。

当時18か19才で、将来の職業のことなどを考えるようになっていた。
この小説を読んで、
主人公:小野寺俊夫のように、特別な技術をもった
プロフェッショナルな仕事につきたいと考えるようになった、
いまでも強い記憶が残っている。


物語の舞台は「異変」から25年後。
「異変」後の日本人たちのことを描いた正当派の続編。

谷甲州さんの筆致は、小松左京さんの前作を誠実に踏襲した様で
違和感なく、継続した世界を楽しめます。

政治家や学者や技術者e.tc.
小松左京さんの描く登場人物たちは誰も、いつもその仕事や
生き方、考え方に芯が通っていて、
だから単なるエンタティメントとして楽しむだけでなく
自分自身の仕事や生き方についても、見つめなおす、
そんなきっかけを与えてくれるように思う。


25年という時間、
前作を読んだ十代後半の時には、想像がつかないものだったけれど、
今の自分には、確かに計れるものになっている。
それが歳をとることだとわかったし、それはそれだけの年を生きた
大人が持てる価値のある感覚だと思うようになった。


「異変」を生きのびていた阿部玲子が活躍しているのが嬉しかった。

そして玲子と小野寺の再会シーン。
26年間の重みにためらいながら、小野寺が出会いの日に交わした
言葉で、気持ちを伝えるシーンには胸があつくなった。
(前作のその場面と交互に何度も読み返しました。)

それだけでも、おすすめです。
(でも前作は、できれば一緒に読むべき。
 売っているのであれば一緒にぜひ。)