主人公:田村久雄が、予備校に入るために名古屋から上京する1978年4月から、
30歳の誕生日を迎えようとする1989年11月まで、5編の短編からなる小説集。
主人公は、奥田さん自身の投影なのかもしれない?
(著者紹介によると奥田さんは1959年生まれだから、主人公と年齢は同じ。
岐阜県生まれとあるが、名古屋とはごく近いし..)
「最悪」や「邪魔」とは、ぜんぜん違うタイプのだが、
楽しめました。
私は、主人公よりちょうど8歳年下になるけれど、
この小説の背景になる時事の出来事は、
記憶な中で鮮明にたどることができる。
(下記は、時系列に並べ替えたもの。)
1978/04/04 キャンディーズ解散コンサート
1979/06/02 江川卓、阪神戦でプロ入り初登板
1980/12/09 ジョン・レノン、NYj自宅アパート前で射殺される。
1981/09/30 1988年オリンピック選考。名古屋、ソウルに大差で敗れる
1985/01/15 ラグビー日本選手権、新日鉄釜石7連覇
1989/11/10 ベルリンの壁、崩壊
その時代(11年間)を、別の人間になって追体験するような
懐かしくて不思議な感覚が味わえた。
こういうタイプの小説は本当に少なくなっている気がするけれど、
よいものだと思う。