海堂尊さんの『チーム・バチスタの栄光』シリーズ最新作
混迷を極める日本の2020—2021を描き尽くす、最新コロナウイルス小説！
海堂尊さんの作品を読むのは久しぶりです。
本作とつながる「コロナ黙示録」が昨年出版されてましたが
そちらは未読。
小説は、新型コロナ禍の2020年9月のシーンから始まり
東京オリンピック開催(7/23)を迎える2021年7月までで終わります。
なじみのキャラクターたちと再会できたのは嬉しかった
のだけど。。
本作は、
新型コロナ対応について
容易にわかるように実在の人物の名前をもじる形で
登場人物を配していて、
そして医療クラスタへの、
強い批判・否定で埋まっていて、
ちょっとびっくりしました。
特に、大阪維新をすごく嫌っているのですね。
一連のシリーズで、
Ai（オートプシー・イメージング＝死亡時画像診断）の導入について
現状への不満を描いていたのには、
医者でもある海堂尊さんならでは意見として、重みがあったのだけど
新型コロナについては、
現実の地位や実績のある有識者の意見も、ばらばらな中で
一方の面からの断定的な視点をエンタメの世界に
もちこんでいるのは、正直違和感がありました。
例えば、
本作では、感染症が起きた場合の対策は
はやく広く診断して、感染者を隔離するというのが当然という
見方によっていて
（医療者の立場としてはそうなのだろうとは思います。）
経済的な負荷の側面への言及はないです。
東京オリンピック開催については、
”終わりの始まり”のような言語道断の愚策という
描かれ方をしています。
当時のTwiterの片側の意見のまとめサイトを見ている
気分になりました。
最終章で、安倍元首相をモデルにした登場人物が
オリンピック開会式欠席表明したことを
「敵前逃亡」、五輪を支持しない「非国民」になったと書いているのだけど、
それは、批判ありきの見方で、事実とはちがうのじゃないかな。
物語では
東京オリンピック開催を始めとする与党の愚策の結果として
日本は、これから終わりを迎えるだろうくらいの
悲劇的な印象で終わるのですが
(本作の発売日は2021年9月3日）
その後、
世界から理由がわからないと不思議がられるくらいの
感染者数の激減が起きたり（米、英仏の状況とはくらべられませんね）
（菅政権＋河野担当大臣のワクチン接種の急激な促進の功績といわれていますね。）
菅総理退任後の衆議院選挙で、
自民党が議席を保っただけでなく、国政維新が躍進したという
現実を知っている立場でみると、
本作の続編が書かれるとしたら
どういうストーリーになるのかなと興味がわきました。
（さすがにオミクロン株の収束や北京オリンピック後の状況が定かになるまでは
出版社もまた書きましょうとはいえないか。）
<宝島社の作品ＨＰ>
https://tkj.jp/book/?cd=TD019394
<出版社HPの作品紹介より抜粋>
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2020年9月、新型コロナウイルスは第二波が収まりつつあった。
安保宰三は体調不良を理由に首相を辞任、後継の酸ヶ湯政権がGotoキャンペーンに励み、
五輪の開催に向けて邁進していた。
そんななか、日本に新型コロナウイルスの変異株が上陸する。
それまで目先を誤魔化しながら感染対策を自画自賛していた浪速府知事・鵜飼の統治下、浪速の医療が崩壊し始め……。
浪速を再生するべく、政策集団「梁山泊」の盟主・村雨元浪速府知事が、
大ボラ吹きと呼ばれるフリー病理医の彦根医師や、ニューヨーク帰りの天馬医師とともに行動を開始する。
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